この曲は日本のジャズファンに最も愛された曲の一つであることは間違いないが、そのタイトルの意味が誤解されていた。

「帰ってくれたら嬉しいわ。」は間違いだった。


この歌の題名は長い間「帰ってくれたら嬉しいわ。」と訳されていたけれど、実はそうではなかった。

文型は簡単な倒置法

最後についているtoがポイントだ。このtoはどこに続くのか?と考えれば、それはもう文頭のyouしかない。つまりIt would be so nice to come home to you. という文章なのだ。だから「去ってしまった貴方が帰ってくれたら嬉しいわ。」ではなく、「きみの元へ帰れたらどんなに嬉しいことだろう。」と第二次世界大戦で出征した兵士が、国の妻や彼女を思って歌っているのだ。


1943 作詞・作曲 Cole porter


この時代的背景を考えれば分かり易い。歌の歌詞を通じていろいろなことに思いを巡らせる事ができるのも、ジャズスタンダードの魅力だ。

でも女性歌手が歌っている


しかしそうだとすると女性歌手が歌うのはどうなんだ、と思う人がいるかも知れない。でもそれでは想像力がなさ過ぎるというものだ。外地にいる彼や主人が帰って来れば、私が家に帰ったとき居てくれる訳だから。


Helen Merrill with Clifford Brown はよく聴いた


日本ではHelen Merrillの持ち歌のように思われている節があるが、実はそうではない。そもそもスタンダードと呼ばれる曲は、誰の歌、というものではなく、誰もが歌うものだ。Sarah Vaughan, Ella Fitzgerald, Anita O’day, Julie London, Jo Stafford, Frank Sinatra, Nancy Wilson, Andy Williams と、多くのジャズ歌手が録音しているし、ジャズ歌手を名乗る人でこの歌がレパートリーに入っていないという人はまずいない。

ジャズスタンダードと呼ばれる曲は、一説には4000曲以上、とも言われているが、現代でも誰もが歌って、真の意味でスタンダードとして残っている曲は意外と3~400曲くらいじゃないだろうか。このカテでは、そのスタンダードにまつわる話を思いつくままにしていきたい。

ご意見、コメントをよろしくお願いします。

投稿者: Nao Suganuma

ジャズミュージシャン、ピアニスト&シンガー。Nao Suganuma Jazz Lesson主宰

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