僕自身、今思うに、ジャズを聴き出した頃はほとんどNat King Coleなんて聴いたことが無くて、MilesやBlakeyなんかがジャズだと思っていましたね。そして何の努力もせず、何の実力もないまま、プロとしてピアノを弾く日々が始まりました。
その頃の僕はジャズヴォーカルには全くと言っていいほど興味がなく、ヴォーカルのレコードを聴いていても、間奏のソロやバッキング、イントロ、エンディング、等のピアノを聴いているだけでした。ハンク・ジョーンズとトミフラが伴奏の名手だという事を本で読み、その2人のピアノをよく聴いていました。

そして10年ほど経ち

何かのタイミングで、友人からNat King ColeのCDを借りたのです。多分”The Best of Nat King Cole”みたいなやつでしたね。そしてそれを聴いて、一気にのめり込みました。
こんなにも優しく、しかもスウィンギーで、甘くささやきかける音楽があったのか、と衝撃を受けました。特にWhen I fall in love は感動しました。ゴードンジェンキンスの豪華なストリングスアレンジに続いて、1点の曇りもなくKing Coleが “When I fall in Love” と歌い上げてきます。今聴いてもゾクゾクくる、本当に素晴らしいテイクですね。

King Coleのように歌いたい、と思った

僕はそれまで、自分でジャズを歌うという事は全くしたことがありませんでした。バンドマンになりたての頃、深夜のホストクラブで歌謡コーラスバンドみたいなところのメンバーになっていて、ちょっとだけ”ワワワワー”といってたことはありましたが。
でもこの歌を聴いて本当に歌いたい、と思いました。Nat King Cole のように。

そして歌ってみた

1998年、 横山涼一(B)、木村由紀夫(D)という素晴らしいサイドメンに助けられつつ、 かなり強引にCDを出しました。弾いて歌う、スタイルで。それまでChet Bakerの吹き歌いは聴いたことがあったんですが、やはりChetはトランぺッターなので、僕自身とかぶっては想像できなかったんですね。しかしNat King Coleはピアノ弾き語りですから、なんとか真似をしてみたい、と思ったわけです。

ひどかった!

CDが完成して聴いてみると、ベースとドラムが超一流ですから、全体のサウンドはまあまあなのですが、とにかく歌が下手なわけです。1ヶ月ほどで売ることも嫌になってしまい、それからずっと残部はクローゼットの奥にしまい込んであります。そこで最も思ったのが、声が違う、という事でした。もちろんNat King Coleの声は出せなくてもいいんですが、”英語の声”が出せないとダメなんですね。そこから”英語の声”という大命題を抱えてしまったわけです。

あれ、話がタイトルと違う方向に

そうですよね、今日はNat King Coleの魅力について書くつもりで始めたんですが、いつの間にやら自分の回想録みたいになってしまって。まあそれくらいに思い入れがある、ということなんでしょうかね。

次回の投稿では本来の目標に戻って、Nat King Coleの魅力について、さらに語っていきたいと思います。

投稿者: Nao Suganuma

ジャズミュージシャン、ピアニスト&シンガー。Nao Suganuma Jazz Lesson主宰

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